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専業従事者を雇用し、構成農家の負担を軽減(有限会社ファーム坊ノ森)
有限会社 ファーム坊ノ森
Profile
設立 | 平成17年4月 |
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所在地 | 石川県白山市宮永町 |
農業地域類型 | 都市的地域 |
組織形態 | 有限会社 |
構成員農家 | 24戸 |
経営類型 | 水稲+大豆 |
耕地面積 | 経営規模30.1ha(水稲24.5ha、大豆5.6ha) |
組織の特徴 | 農地は利用権設定により、集落の4割を一括して管理・運営し、経営の効率化を実現。水稲はJA松任のブランド米である「千代の里」を特別栽培米として栽培するほか、ゆめみづほ、ハナエチゼンも栽培 |
運営体制 | 育苗、用水管理、水管理は専従の社員が担当。田植えや刈り取りなどの作業は社員を中心に出役計画を作成し、構成員全員が参加 |
機械装備等 | トラクター2台、田植機1台、コンバイン2台、ブロードキャスター1台、畦塗機1台(平成16、17年度地域農業集団育成事業で導入) |
余剰金の分配方法や小作料など | 余剰金の分配は面積割合4割、従事分量割合6割 |
その他 | 平成19年度白山石川新たな農業の創造推進運動知事賞 視察の受け入れ 可能(有料) 講演会等の依頼 不可 |
意向調査をもとに組織化を検討
ファーム坊ノ森が組織化に向けて動き始めたのは平成14年にさかのぼる。
当時、宮永町の農家では65歳以上の高齢者がおよそ半数を占めたほか、後継者不足が急速に進んでおり、その結果、集落内に2軒ある中核農家に農作業を委託するケースも増えていた。
とはいえ、将来的には中核農家が対応できなくなる事態も想定され、「集落内で協力しあって、農地を守っていく組織が必要ではないか」との機運が高まっていた。
そこで、平成14年11月、宮永町生産組合に音頭を取ってもらい、営農組織ができたとしたら参加する意向があるかどうかについて集落の農家にアンケート調査を実施した。
その結果、13軒の農家から集落営農に向けて前向きな意見が寄せられたことから、それらの農家で「宮永町農業を考える会」を発足させ、どのような形態の組織がベストなのか、検討を重ねていった。
任意でスタートし、有限会社へと移行
当時、近隣でも集落営農に取り組む事例はいくつか見られたが、「農作業や経理事務などにおいて役員の負担が重すぎる」「農作業に出てこない者がいる」といった問題点が指摘されており、考える会では、皆が作業を分け合って分担する組織を目指そうと申し合わせると同時に、専従者を1人雇用することを決めた。
考える会のシミュレーションの結果、水稲単作では耕地面積が20haを超えないと採算が合わないことが分かったため、より多くの農家に加入してもらい農地を集積しようと説明に回った。最終的には24軒の農家が参加し、平成15年12月に協業経営型の営農組合として「ファーム坊ノ森」を発足させた。
任意団体ではなく、当初から、法人化してもよいのではとの意見もあったが、「法人格を取得したら無責任にすぐ解散するわけにはいかない」との思いから一度決算してから判断しようと任意組合としてのスタートを選んだ。
だれもが経験のなかった定款づくりには苦労したが、石川県石川農林総合事務所の協力を得て作成した。
営農を開始してから一年、決算の結果、法人化してもやっていけるとの確信を得て、平成17年4月に利益の追求、収益の内部留保が可能な有限会社へと移行した。
農業経験のない若手も参加
懸念材料の一つだった出役計画に関しては、播種や田植え、稲刈りといった作業の都度、いつならば作業に出られるのか、どんな作業ならば出られるか、といった点について構成員全員に確認した上で調整している。
水の管理や手作業による除草などの軽作業は平日に高齢者が、重さ30㎏を超える防除機(動力散粉機)を担ぐ除草剤の散布作業は土日に兼業農家の若手が担当する。
世代交代によって農業経験のない若手が参加することも増えてきた。同社の得田恵裕取締役専務は「作業に出てきてもらうことが存続のカギであり、前向きな意欲は大歓迎」と目を細める。
将来的には専従の社員をもう1人増やすことが目標で、そのためにはさらに農地の集積を図っていくほか、野菜などの複合栽培も視野に入れている。